進化するトルクコンバーター:ロックアップクラッチと燃費性能の向上
従来のトルクコンバーターには、大きな弱点がありました。それは、「スリップ」による燃費の悪化です。流体を介した動力伝達は滑らかですが、常に若干の「すべり」が生じるため、高速巡航時などでは動力損失となり、燃費を低下させていたのです。
この課題を克服するために開発されたのが、ロックアップクラッチ機構です。これは、ポンプとタービンの間に設けられたクラッチで、一定速度以上で走行中など、トルク増幅が不要な状況になると作動し、ポンプとタービンを機械的に直結します。これにより、エンジンの回転がそのまま変速機に伝わるため、スリップによる動力損失がなくなり、燃費が大幅に改善されます。また、エンジンブレーキも直接効くようになるという副次的な利点もあります。
さらに近年のトルクコンバーターは、このロックアップクラッチの適用範囲を大幅に拡大しています。従来は高速巡航時のみの作動でしたが、技術の進歩により、低速域や変速の瞬間にも素早くロックアップを行う「広域ロックアップ」や「多段式ロックアップクラッチ」が実用化されています。これにより、AT車の燃費はMT車に匹敵、あるいはそれを上回るまでに進化を遂げているのです。
FAQ
Q: ロックアップクラッチが作動するとき、ドライバーは感じますか?A: 昔の機構ではわずかなショックを感じることがありましたが、最新の電子制御により、ほとんど感知できないほど滑らかに作動するようになっています。
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